Lenovo XCC2 SNMPv3 ベースの電力消費量モニタリング(Zabbix 連携ガイド)〔日本語版〕

サーバ運用では、CPU・メモリ・ディスク状態と同じくらい重要な指標がある。
それが 電力消費量(Power Consumption) だ。
データセンターは電力で動く。電力消費を把握できなければ、電気料金の算定、ラック単位の電力容量計画、過負荷防止、障害予防のすべてが成り立たない。

Lenovo サーバの XClarity Controller2(XCC2)は BMC(Baseboard Management Controller)であり、リモート管理だけでなく、SNMP(Simple Network Management Protocol)を通じて電力・温度・ファン速度などのハードウェア情報を提供する。
Zabbix では Template Server Lenovo XCC SNMPv3 テンプレートで XCC2 を連携できるが、このテンプレートは Polling ベースであり、電力アイテムは標準では含まれていない。そのため、OID を調べてカスタムアイテムを追加する必要がある。

以下では、UTP ケーブル接続 → 管理ポート初期 IP 設定 → SNMPv3 有効化 → Zabbix 連携 → 電力 OID 追加までの全手順を説明する。


1. 管理イーサネットポートの初期設定

BMC(XCC2)はサーバ本体とは別の専用管理 LAN ポートを持つ。
このポートは OS と独立して動作し、電源が OFF の状態でもリモート接続とモニタリングが可能だ。

物理接続

  • サーバ背面の Management Ethernet Port に UTP ケーブルを接続
  • 反対側はノート PC またはスイッチに接続
  • 初期設定時:ノート PC との直結
  • 運用時:Zabbix サーバと通信可能な管理ネットワークのスイッチへ接続

初期 IP アクセス

  • 一部の XCC2 は DHCP が標準で有効になっており、DHCP サーバから自動的に IP を取得する
  • DHCP が無い場合、工場出荷時 IP(例:192.168.70.125)が設定されている場合がある
  • ノート PC を同一セグメントに設定し、Web ブラウザで
    https://<初期_IP> へアクセス

初期ログイン

  • デフォルトアカウント:USERID / PASSW0RD(0 は数字)
  • 初回ログイン時にパスワード変更が必要

管理ネットワーク IP 設定

BMC Configuration → Network で固定 IP / Subnet / Gateway を設定する。

Zabbix サーバからアクセスできるネットワークであることが必須。
理由:Zabbix が SNMP Polling で OID を取得するには、この管理ポートと直接通信する必要があるため。


2. SNMP Polling と Trap の違い

SNMP には 2 つの方式がある。

Polling

Zabbix サーバが一定周期で XCC2 に OID を問い合わせ → 値を取得

  • 長所:トレンド収集、グラフ化
  • 用途:電力、温度、ファン速度など継続的データ

Trap

イベント発生時に XCC2 → Zabbix へ即時通知

  • 長所:PSU 障害、ファン障害などの即時検知
  • 短所:Trap Receiver IP を BMC に登録する必要あり。
     一部 XCC2 ファームウェアは設定メニューが存在しない。

👉 Template Server Lenovo XCC SNMPv3 は Polling ベースなので、Trap は必須ではない。


3. OID と MIB

OID(Object Identifier)

SNMP オブジェクトを識別するアドレス
例:
1.3.6.1.4.1.19046.11.1.3.1.0 → 現在の電力値

MIB(Management Information Base)

OID の定義と意味をまとめた辞書
例:
lenovoPowerCurrentUsage ↔ 1.3.6.1.4.1.19046.11.1.3.1.0


4. XCC2 の SNMPv3 設定

XCC2 Web UI → BMC Configuration → Network

  1. SNMPv3 Agent 有効化
  2. SNMPv3 Trap 有効化
  3. Engine ID:有効化時に自動生成(失敗する場合は hostname を確認)
  4. Trap Receiver Port:162

BMC Configuration → User/LDAP

SNMP に使用するユーザーを編集 →
User Accessible Interface に SNMP を追加


5. Zabbix SNMPv3 ホスト登録

Host → Interface → SNMP 追加

  • IP:管理ポートで設定した固定 IP
  • Port:161
  • SNMP Version:v3
  • Security name:XCC で設定したユーザー
  • Security level:noAuthNoPriv(例)

テンプレートリンク

  • Template Server Lenovo XCC SNMPv3

6. 電力使用量 OID の確認とアイテム作成

電力関連 OID はモデル・ファームウェアにより異なる。
例として挙げた
1.3.6.1.4.1.19046.11.1.1.10.1.9.0
などは、私が利用したモデル固有の値なので注意。

正確な OID を得るには MIB ファイル確認 または MIB Browser ツール が必須。

MIB ファイル確認 / MIB Browser 利用方法

  • Lenovo / HPE / Dell はサーバ機種ごとに公式 MIB パッケージを提供
  • MIB 内で lenovoPowerCurrentUsage などの電力項目が確認可能
  • iReasoning / SnmpB / Paessler MIB Browser などが利用可能

MIB 確認例

  1. https://mibs.observium.org へアクセス
  2. “lenovo-xcc” を検索
  3. 該当 MIB を開き、電力関連項目を検索

4. SNMP の規則上、スカラ値は必ず 末尾に .0 を付ける

    例:
    .1.3.6.1.4.1.19046.11.1.1.10.1.9Zabbix では 1.3.6.1.4.1.19046.11.1.1.10.1.9.0

    Zabbix は先頭の “.” を不要とするため注意。


    電力関連 OID 例

    指標OID単位
    現在電力(W)1.3.6.1.4.1.19046.11.1.1.10.1.10.0W
    最大電力(W)1.3.6.1.4.1.19046.11.1.1.10.1.9.0W

    Zabbix アイテム登録例

    • 名前:サーバの全体使用可能電力
    • タイプ:SNMP agent
    • キー (Key): IMMcurrentSysPowerStatus.lenovo (任意の文字列)
    • SNMP OID:1.3.6.1.4.1.19046.11.1.1.10.1.9.0
    • 単位:W

    7. HP・Dell への応用

    Lenovo 特有の話ではなく、HP / Dell も同じ方式で取得できる。

    ベンダBMC代表 OID単位備考
    LenovoXCC21.3.6.1.4.1.19046.11.1.3.1.0WLenovo Power MIB
    HPEiLO4/51.3.6.1.4.1.232.165.3.1.1.0WCPQPOWER-MIB
    DelliDRAC7/8/91.3.6.1.4.1.674.10892.5.4.600.12.1.8.1WDell MIB(5分平均/最大)

    共通フロー:
    UTP 接続 → 管理 IP 設定 → SNMPv3 設定 → OID 探索 → Zabbix 登録


    8. 結論

    • BMC 管理ポートは UTP ケーブルで接続し、Zabbix と通信できる管理ネットワークに固定 IP を設定する
    • Template Server Lenovo XCC SNMPv3 は Polling ベースのため、Trap は必須ではない
    • 電力使用量 OID はデフォルトに無いため、自分で追加する必要がある
    • HP iLO / Dell iDRAC も同じ原理で取得可能

    👉 要点は以下の通り:
    管理ポート接続 → 管理 IP 設定 → SNMPv3 ユーザー作成 → Polling で OID 取得 → Zabbix アイテム化

    このフローを標準化すれば、どのベンダ機でも安定した電力モニタリングが構築できる。


    SNMPv3 セキュリティレベル簡単解説

    SNMPv3 はユーザー認証方式で動作し、3 つのセキュリティレベルがある。

    Security Level必要項目特徴
    noAuthNoPrivSecurity name のみ認証・暗号化なし。閉域網向け
    authNoPrivUser + Auth Password認証あり、暗号化なし
    authPrivUser + Auth + Priv Password認証 + 暗号化。最も安全

    閉域管理ネットワークでは noAuthNoPriv がよく使われるが、外部アクセス可能性がある場合は authPriv を推奨。


    Grafana ダッシュボード例

    🛠 마지막 수정일: 2025.12.01

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